本研究の目的は、ワイドギャップ酸化物材料・ZnOの薄膜から成る光源、光変調機能一体化のテラヘルツ波用光学素子に関わる要素技術開発にある。本年度は、下記の項目について、研究を行った。 ○ZnO薄膜テラヘルツ光放射源(THz-Em素子)の試作; 金属Znディスク・ターゲットを用いた高周波マグネトロンスパッタにより、サファイア(α-Al_2O_3)基板上に形成したZnO薄膜表面上にギャップ電極(間隔;1mm)を形成してTHz-Em素子を試作した。基板温度を500℃以上に加熱して形成した薄膜について、20V以上の直流電圧を印加したギャップ電極間に、チタンサファイア・レーザーのフェムト秒レーザー・パルス光(波長;290nm、パルス幅;210fsec、パルスエネルギー;80μJ、照射周波数;1kHz、照射面積;0.04cm^2)を照射したところ、0.3THz付近を中心に1THz付近まで拡がるスペクトルを持ったテラヘルツ光の放射が確認された。 ○ZnO薄膜の高抵抗化; 高効率の光伝導および圧電振動(弾性表面波)の発生には、ZnO薄膜に高抵抗性が要求されるが、金属ZnターゲットからのZnOスパッタ薄膜の抵抗率は、数100MΩ・cm程度と高抵抗とは言い難い。そこで、CuドーピングによるZnO薄膜の高抵抗化を試みた。ターゲットにZnO粉体を用い、数mol%のCuO粉体を混ぜてスパッタすることで、薄膜の抵抗率を10倍以上高抵抗化することができた。 〇多層酸化物薄膜作製の準備; 設備「薄膜多層化ターゲット治具」・一式を購入し、現有レーザー・アブレーション装置に取り付け、多元化を行い、ZnO薄膜を基本とした積層構造作製実験の準備を完了した。
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