提案したプラズモニック結晶を用いたレーザーの基本構造は2次元表面レリーフ格子を刻んだ石英基板上に銀薄膜と利得媒質の薄膜を堆積したものである。レーザー発振を実現するためには吸収損失を低減できる長距離伝搬型表面プラズモン(LRSP)モードを用いる必要がある。LRSPモードを用いるために、金属薄膜の両側あるいは片側の界面に1次元格子が刻まれている構造(1次元プラズモニック結晶スラブ)における表面プラズモンの振る舞いを厳密結合波解析(RCWA)法を用いて調べた。その結果、本構造における、プラズモニック・バンドギャップの存在条件および、放射損失特性の格子形状依存性を統一的に説明することに成功した。さらに、片側が平坦なプラズモニック結晶スラブにおいてはLRSPモードと短距離伝搬型表面プラズモン(SRSP)モードとの相互作用が存在し、両者の間にプラズモニック・バンドギャップが存在することを見いだした。このバンドギャップは1次元プラズモニック結晶において、完全ギャップになっていることを確認した。1次元プラズモニック結晶スラブにおいて、界面近傍に置かれた、励起蛍光分子からLRSPモードへのエネルギー移動の効率を理論的に計算するRCWAを用いた手法を開発した。本手法により、LRSPモードへのエネルギー移動の割合は格子の溝が深くなるにしたがい、高くなることが分かった。レーザー発振には面内の全方向に対して、表面プラズモンの閉じ込めが可能な2次元プラズモニック結晶スラブの利用が不可欠である。2次元プラズモニック結晶スラブの分散関係の自動測定装置を作製し、プラズモニック・バンドギャプおよび、放射特性の測定を行った。さらに、2次元プラズモニック結晶スラブのバンドギャップ特性の解析のための2次元RCWA法のプログラムを作成した。
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