研究課題
2005年度において、かねてから研究開発してきた時間領域差分(FDTD : Finite Difference Time Domain)法を用いた高周波電磁場計算コードを用いて、電子ビームの運動も考慮して矛盾なくマックスウェルの方程式を数値的に解くシミュレーション計算を行ってきた。この計算コードは種々の電子ビームの動力学解析に用いることができるが、主に高周波電子銃のデザインと、取り出される電子ビームの性質の把握およびそれによるデザインへのフィードバックを行った。この一連の計算結果より、2空洞型の高周波電子銃を基本とし、両空洞に独立に高周波を投入できるような形式のものを選択した。これを独立空洞調整型高周波電子銃(ITC RF-Gun : Independently Tunable Cells RF Gun)と呼称することとし、これから生成される電子ビーム性質を詳しくシミュレーションによって調べた。特に重要な特徴は、電子ビームは速度集群(Velocity bunching)効果を促進することが可能で、最短で100フェムト秒以下のパルス巾の電子ビームを生成できる可能性があることが分かった。このとき、ミクロバンチあたりの電子数は30ピコクーロンと比較的少ないが、コヒーレント放射などを用いて、強力な広帯域テラヘルツ光を発生できる可能性があることを示した。しかしながら、テラヘルツ波長領域で自由電子レーザー(FEL)発振を得るには、最低でも50ピコクーロン程度の電子数が必要と考えられ、さらに最適化計算を進めている。年度内に基本的なITC RF-Gunを購入したが、FEL発振を得るための運転モードを確立するためのさらなるシミュレーション計算が必要であり、またシケインなどを用いたバンチ圧縮装置を導入した加速器構成を考えねばならないことも明確になった。これらの研究成果は2つの国際会議で発表し、一定の良い評価を得ることができた。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
Proceedings of 2005 Particle Accelerator Conference, Knoxville, TN, USA
ページ: 3499-3451
Proceedings of the 27th International Free Electron Laser Conference, Stanford, CA, USA
ページ: 142-145