研究概要 |
ピクセル検出器技術は、医療から高エネルギー物理に至るまで、X線検出技術に革命を齎しつつある。本研究で言う「ピクセル」は、CCDに対して用いられるそれとは本質的に異なり、各ピクセル自身が既にX線検出器のシステムであり、単一X線光子が計測可能な機能を内部に有する微小機能体である。その優位性は、(1)ノイズが存在しない点、(2)エネルギー弁別能を有する点、(3)高計数能力を有する点である。 研究代表者らは、JASRI-PSI国際研究協力協定に基づき、0.25μm CMOS技術による特定用途向け集積回路を用いて開発されたピラタスII単一モジュール検出器をSPring-8へ導入した。シリコンセンサーは、厚み300μmでSPring-8の標準波長1ÅのX線に対し75%の吸収効率を有する。有感面積は33.54×83.764mm^2で、172μmピッチで195×487=94,965個のピクセル電極が形成されている。読み出しチップ上の各ピクセルは、X線光子がシリコンセンサーに開放する電荷を電荷有感型前置増幅器で電圧に変換し、それとピクセル毎に設定された閾値電圧との大小関係をコンパレーターで比較演算して、カウンター回路に受光したX線光子数を加算するように設計・製作されている。1チップ当り、97×60ピクセル分の回路が搭載されており、8×2=16チップを用いてシリコンセンサーの全有感面積を受ける。 ここで開発したピクセル検出器は、SPring-8に於いて、BL19LXU(パルス強磁場下における時分割X線回折)、BL46XU(X線回折による溶接金属凝固組織のその場観察)の他、BLO1B1(蛍光XAFS)、BL02B1(有機伝導体のパルス電流下時間分解計測)等で先駆的な利用実験に供された。これら新しい実験手法開発の成果は、2006年5月28日〜6月2日に韓国で開催された国際会議SRI2006に於いて「Methodological Study of a Single Photon Counting Pixel Detector at SPring-8」、同年9月11日〜15日に米国カリフォルニアで開催された国際会議STD6に於いて「A single photon counting pixel detector system for synchrotron radiation applications」、2007年1月12日〜14日に広島で開催された日本放射光学会年会に於いて「Single photon counting型2次元検出器:PILATUS」等で発表を行った。
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