研究概要 |
近年,最適化問題に対する内点法や一般化ニュートン法など効率的解法の目覚しい発展に平行して,それらの新しい応用領域が次々と開拓されている.一方,モデリング的観点から見れば,現実には様々な不確実性が存在するため,そのような不確実性の要因をどのように取り扱い,望ましい解を見出すかということは極めて重要である.ロバスト最適化とはそのような状況に対応するための方法論の総称であり,特にある種の特殊な不確実性の仮定のもとで線形計画問題が2次錐計画問題と呼ばれる凸最適化問題として定式化できることなど,多くの興味深い結果が示されたことにより,改めて注目を集めている研究対象である.本研究の目的は,ロバスト最適化を,不確実性を適切に取り扱うための確率的あるいは非確率的最適化と位置付け,凸最適化および相補性に関連する諸問題に対して堅固な理論的基盤に立脚した実用的な手法を開発することにより,工学における応用領域の拡大に寄与することである. 本年度は「不確実性下のロバスト均衡と2次錐相補性問題に関する研究」および「確率的相補性問題に関する研究」を重点的に実施した.前者のテーマについては,不確実性のもとでの非協力ゲームにおけるロバストNash均衡を2次錐相補性問題として定式化し,その解を計算する手法の研究を推し進めるとともに,2次錐相補性問題に対する効率的なアルゴリズムの開発を行った.後者のテーマについては,確率的相補性問題に対する期待残差最小化法をさらに拡張する試みを遂行するとともに,一般化半無限最適化問題および不確実性のもとでの均衡制約つき数理計画問題に対するアルゴリズムの開発を行った.
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