研究概要 |
得られた成果を以下にまとめて示す。 1.折れ曲がり/テーパ付き形状の配線を想定し,損傷予測を行った。形状の異なる配線の各々でEM損傷のしきい電流密度を予測した。折れ曲がった配線のしきい電流密度の方が直線形状のそれよりも大きいことがわかった。 2.上記1の形状の試験片を用いて通電実験を行い,予測結果から得た配線構造・形状によるEM損傷への依存性を確認するとともに,予測法の妥当性を示した。 3.配線長が一定の下で折れ曲がり位置やテーパ方向を変化させることにより,配線構造・形状と損傷予測パラメータとの関連性を抽出した。配線内のマクロな電流密度分布が配線の許容電流に影響を及ぼすことがわかった。これより,配線構造・形状に関する長寿命化の設計指針を獲得した。 4.Al積層配線に対しTEOSあるいはポリイミドの保護膜材料を組み合わせた配線を想定し,EM損傷予測を行った。同じ保護膜厚さに対してポリイミド保護膜配線の方が長寿命となる結果を得た。 5.上記4の試験片を作製し加速通電実験を実施した。予測結果の十分な検証に至らなかったが,意図したとおりの損傷が発生し予測結果の傾向を確認した。 6.Al配線に対しTEOS,ポリイミド,SiNを保護膜とした組み合わせ配線を作製し,ナノ押し込み試験を実施した。弾性率はSiN,TEOS,かなり離れてポリイミドの順に小さくなった。またこの順に付着強度が大きいことが示唆された。 7.ナノ押し込み試験より得た機械的特性を損傷予測パラメータであるEM特性定数と比較検討した。配線の長寿命化には,弾性率が小さく配線との付着強度が大きい保護膜との組み合わせが有効であることが示唆され,これらの関連性から保護膜の材料・厚さに関する長寿命化の設計指針を獲得した。今後,保護膜機械的特性と予測パラメータ「有効体積弾性率」との関連性も考慮して,より総合的に長寿命化への検討を行う予定である。
|