研究概要 |
平成17年度は,まず,陰解法に基づくマルチスケール非弾性有限要素解析を可能にするため,非弾性均質化理論の陰解法用定式化を次のように行った.すなわち,後退オイラー法により離散化した非弾性構成式をTaylor展開により線形化した後,ユニットセルに関する仮想仕事式に代入し,さらに変位をマクロ成分と擾乱成分に分離することにより,ユニットセルの微視的状態と巨視的状態を反復法により陰解法的に解析できる均質化理論を定式化した. 次に,上述のように定式化した均質化理論をマクロ有限要素解析の材料モデルとみなし,汎用有限要素解析ソフトABAQUSの材料モデルサブルーチンUMAT用にコーディングした.これにより,巨視的境界値問題の各有限要素の各積分点で均質化のための微視的有限要素解析を反復的に行うことを可能にした. つづいて解析例として,簡単なセル構造体からなる円孔付き帯板の引張変形を解析した.セル材料の非弾性構成式としては,速度非依存の等方硬化塑性モデルと速度依存のべき乗クリープ構成式を用いた.この結果,本研究で導いた微視的境界値問題は,微視的変位増分および微視的応力のいずれかに関して反復的に解くことができ,どちらの場合も2次収束することが示された.ただし,この反復計算における微視的変位増分および微視的応力の初期値を前回ステップでの収束値に等しくとれば収束が大変速いが,微視的変位増分の初期値を巨視的ひずみによる変位増分に等しくとった場合は,増分を大変小さくしなければ,収束速度が遅くなることがわかった.
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