研究概要 |
平成17年度は,Si-O-N膜の酸素バリア性,透明性,グロー放電の安定性と成膜条件(膜厚,反応ガス流量比,ターゲット電流値など)の関係,およびIZO膜と酸素バリア膜との積層化にともなう光学的,電気的特性の変化について検討を行った.検討に際しては,傾斜対向式dcマグネトロンスパッタリング装置を用いて,各々の薄膜をPETおよびガラスを基板上にコーティングした.可視光透過スペクトルの測定には分光光度計を用い,導電率・ホール移動度・キャリア電子密度の測定にはホール効果測定装置を用いた.また,酸素透過度の測定にはMocon社製OX-TRANを用いた. 検討の結果,Si-O-Nの成膜では,酸素透過度が膜厚30nm,ターゲット電流値0.5Aで極小値を取ることがわかった.また,窒素とアルゴンのガス流量比が大きいほど可視光透過度が向上するが,流量比N_2/(N_2+Ar)=0.10を境にして酸素バリア性が急速に悪化することがわかった.これらの結果を基に,今回の実験で透明性及び酸素バリア性が最も良くなった条件でSi-O-N膜をコーティングし,その上にIZO膜を積層した.その結果,積層膜の導電性は同条件で成膜したIZO単層膜よりも悪化することが明らかになった.これは,Si-O-N成膜後では真空チャンバー内の残留酸素およびチャンバー内壁への吸着酸素が多く,Si-O-N/IZO界面では酸素が過多となっていることが考えられる.このような酸素は,IZOの導電性をもたらす酸素空孔の形成を阻害する要因となる.短時間でこのような残留酸素等の影響を抑制するため,IZO成膜の初期段階では酸素を外部から導入せずに成膜を行った.その結果,単層膜と同等の導電性を確保できた.
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