研究概要 |
1.切削・摩擦撹拝複合加工の摩擦攪拌部分を抽出した加工面特性の評価を行った.ピン突出量,潤滑状態,回転速度;送り速度,クロスフィードを変化させて加工実験を行い,以下の知見を得た. (1)結晶微細状態とその特性:加工面の電子顕微鏡写真,TEM観察,エッチング面の顕微鏡観察を行い結晶粒の微細化状態とその特性を調べた. (2)ある条件下では,S45C表層に厚さ100μm程度で,ビッカース硬さ700HV以上の非常に硬い組織が創成されることが明らかとなった.また,結晶粒は通常の鋼の標準組織やマルテンサイト組織とは異なる可能性が大である. (3)残留応力状態の測定:X線応力測定装置により加工表面層の残留応力を測定した.表層には圧縮残留応力が生成されることがわかった. (4)耐食性の評価:創成された表面層の酸浴下での耐食性を試験した.表面観察を行ったところ,かえって腐食が進行している傾向が見られた.この点は更に検討が必要である. 2.切削・摩擦攪拌複合加工における塑性流動状態など加工機構のモデル化 (1)模擬実験:高速での加工状態は変形過程の直接観察が困難であるため,プラスティシンを用いた模擬実験を行い変形過程を直接観察した.通常のバニシングや切削では生じ得ない大ひずみが生じていることが明らかとなった. (2)摩擦攪拌部においては,回転速度を毎分数万回転と高くすることにより熱軟化が促進し摩擦攪拌による変形が容易となっている可能性が高い.さらに,摩擦攪拌時の温度とその後の冷却プロファイルも加工面の硬度や組織変化に影響していることがわかった. (3)(1)厚みが数十ミクロンで硬度が900HV程度,(2)厚みが200ミクロン程度で硬度が750HV程度,(3)厚みが600ミクロン程度で硬度が600HV程度,と創成表面層の厚みと硬度を制御できる可能性が見いだされた.
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