研究概要 |
MQL切削は,現在最も適用範囲が広い環境適応型の加工技術であり,圧縮空気を用いて環境負荷の低い生分解性切削油を切削点に微量噴霧する.多くの条件で湿式切削と同等の切削性能を示すが,オイルミストの発生が作業者の健康や工場環境に及ぼす影響が懸念されている.そこで本研究では,次世代の環境適応型切削加工技術として,1時間当たりの切削油が1ミリリットル(1ml/h)を下回る加工技術を提案した.実用レベルで現状の1/10以下まで切削油の使用量を低減させることを目的とし,典型的な難削材であるNi基超耐熱合金の切削について,実験と解析を行った. まず高度にオイルミストを刃先に局在化させるための新しいMQL用切削工具の開発を行った.これは本研究における最も重要な課題であり,オイルミストを切削点に誘導し,工具摩耗を軽減する.旋削に対しては,前逃げ面側からの斜め吹き出しが有効なことを明らかにし,オイルミストの噴出口の位置を調整することにより,1.1ml/hの切削油の供給で,湿式と同等の工具寿命と湿式より良好な仕上げ面粗さが得られることが分かった. 次に,CFDによるオイルミストの流れの可視化とオイルミスト供給条件の評価最適化法について研究を行った.汎用数値流体解析ソフトと形状モデリングのための三次元CADを使用し,得られた圧縮空気の圧力、速度,渦度から斜め吹き出しの優位性を確認するとともに,オイルミストの供給条件の評価法を提案した.最後に,工具の逃げ面に1μmのグレーティングシートを貼付し,マイクロサーフェステクスチャの影響について検討した.オイル供給量が微量で,乾燥状態が維持されれば,逃げ面摩耗が低減することがわかった.
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