研究概要 |
これまでの研究で,切削力の予測に用いる切削加工モデルや,工作機械の制御に用いる仮想倣い加工モデルを開発してきたが,これらを統合して情報を共有することは難しかった。この問題を解決するためには,加工プロセスを一つのモデルで表現し,情報の共有と活用が可能なシミュレーション技術や情報処理技術を開発する必要がある。今年度はこうした技術の中核となる要素技術に関して以下の成果を得た。 1.オクトツリーによるボクセルモデルの階層構造,Kitta CubeやMartin Cubeといった近似手法に関する論文を参考に,ボクセルモデルによる加工プロセスモデルを構築した。この加工プロセスモデルは切削シミュレーションだけでなく,CAD/CAM/CAEなどにも利用可能な汎用性と互換性を兼ね備えていると期待できる。 2.1で構築したボクセルモデルを用いて,加工形状シミュレーションを実現した。ボクセルモデルでは形状を高精度に表現すると計算機メモリの使用量が急増することが知られているが,多段の階層構造にして計算機メモリの使用量を抑えながら高精度な加工形状シミュレーションを実行した。また,工具の移動指令が微細でB-repモデルを用いた形状表現ではシミュレーションが破綻する加工事例に対して,ボクセルモデルを用いた場合にはシミュレーションが可能であることを実証した。また,加工形状シミュレータと切削力シミュレータを統合して,加工形状変化を視覚化すると同時に加工中の切削力を推定することに成功した。 3.工作機械を制御するスマートNCプロセッサとスケジューラとの情報統合を新しく提案した。ここでは,スマートNCプロセッサが有する加工開始と終了の発信機能や加工終了時刻の推定機能を利用して,生産計画を動的に変更可能なリアクティブスケジューリングを実現し,生産変動に対する柔軟な対応や生産効率の改善に貢献できることを示した。
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