摩擦・摩耗を制御すうめに、添加剤の表面反応を制御することを目的とした。特に、表面形状を積極的に利用して、表面形状により摩擦面におけるトライボ化学反応を積極的に制御することに成功した。潤滑油添加剤としては、摩擦調整剤であるMoDTCおよび耐摩耗剤であるZnDDPを複合して用いた。MoDTCを用いることにより、なじみ期間ののち摩擦係数は安定した低い値を示した。XPSおよびTOF-SIMSによる表面分析の結果、MoDTCは突起部で反応しMoS_2を形成し、ZnDTPは谷部でZn_3(PO4)_2を形成して潤滑特性を制御することが明らかとなった。すなわち、突起部の厳しい条件では金属材料表面の酸化物皮膜が除去され、金属新生面が露出することにより、MoDTCが反応しやすくなったと説明できる。一方、ZnDDPは金属酸化物が多い、表面粗さの谷の部分に多く生成した。このように境界潤滑膜が形成されることにより、なじみ期間、定常期における安定な低摩擦係数が実現できることを明らかにした。 研磨により金属材料の表面形状を制御することにより、添加剤のトライボ化学反応が促進され、その結果としてトライボロジー特性を制御できることを明らかにした。低摩擦係数を得るためには、最適の表面粗さがあることを見出した。金属材料の表面形状をフェムト秒レーザにより調製し、周期400〜800nm程度の周期的構造に対して本法を適用した結果、研磨法で調製した表面と同様の効果を得ることができた。すなわち、極微細な表面形状を構築することにより、添加剤のトライボ化学反応により生成する境界膜でトライボロジー特性を制御できることが明らかとなった。
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