研究課題
近年、DNA等の生体高分子における自己組織化、構造転換能、分子認識能を有効に利用し、そのナノ構造体およびナノ機械を創製する研究が注目されている。生体高分子の「特殊機能材料」としての上記特性は水溶液中でのみ発現するため、その水和構造や水分子の熱振動の効果を適確に記述し、さらに現象を時間および温度に強く依存するダイナミカル流動システムとして捉えることが本研究の主眼である。本年度は主として、ランジュバン方程式とマクスウェル方程式のカップリング技術を高度化とし、粗視化モデルを用いた長鎖DNAの流動を、より精度良く勝つ高速に数値解析することを可能とした。貝体的には、粗視化のレベルをヌクレオチド単位(リン酸基+デオキシリボース+塩基)とすることによって、SNP(一塩基多型)解析にシミュレーションで対応することを目指した。これは、ゲル電気泳動法によるDAN分離技術の高精度化に寄与する可能性が高く、また、ガンの遺伝子診断への応用が期待されている。この一塩基分解能粗視化モデルに、より微視的な情報を取り入れるため、量子化学解析の高度化に関する応用数学的研究も積極的に行った。すなわち、電子状態を記述するシュレーディンガー方程式を非定常に拡張し、外部電場の影響を摂動法によって捉え、そこから粗視化モデル構築に必要なデータを抽出することを可能とした。研究成果の基本部分を、専門学会で多数発表しており、現在、専門誌に投稿準備中である。また、本研究で得られたバイオナノ流動ダイナミクスのミクロからマクロまでの理論・シミュレーション技術を適用し、抗原・抗体反応、すい島細胞の破壊過程、リゾチーム分子のシリコン基板への吸着現象、電解質中のイオン流動(リチウムイオン電池)、赤血球を含む超微小球体の運動を理論ならびに実験の両面から解明し、工業・臨床応用を模索した。これらの成果は、国内外の一流雑誌や学会誌に掲載されている。
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http://bnf.me.es.osaka-u.ac.jp/main/index_j.html