研究概要 |
本研究では、脳動脈瘤における血行力学的要因に着目し、計算的・実験的アプローチを併用することにより、瘤の発生および破裂のメカニズムを解明することを目的として行った。 1)血流シミュレータの構築 流体解析にはALE有限要素法、構造解析には超弾性体の混合型有限要素法を用いた流体構造連成解析プログラムを構築し、医用画像から構築した中大脳動脈瘤モデルに対して適用した。解析の結果、流体構造連成解析では、流体解析のみや構造解析のみを行った場合と比べて有意な差が表れ、流体構造連成解析の有用性が確認された。 また、境界条件に着目し,末梢血管による圧力抵抗を再現した解析を行うため,末梢血管の構造と特性を考慮した流出境界条件の導出を行った.導出の際には,解剖学的知見に基づいた末梢血管網を構築し,1次元解析と0次元モデルを適用することで,血管の弾性および血液による粘性抵抗を考慮した.その条件下でWillis動脈輪の血流数値解析を行い,自由流出境界条件下と比較したところ,血流量・方向および流量分配に変化が見られた.特に狭窄の存在する症例では,血流量の足りない部位に他の血管を通じて血流量を補う,生体が持つ機能の再現が確認された. 2)in vitroモデル実験 光造型法・ロストモデル法を用いて,アスペクト比0.62の動脈瘤のある実血管形状のin vitroモデルを作製し,定常流入条件下で瘤内部の流れを計測した.計測結果から瘤内の流線を作製したところ、壁に沿った渦構造が観察された.また、形状データと計測結果より壁面せん断応力を算出した結果,瘤内部に高壁面せん断応力が確認された. 3)数値解析と実験結果の比較・検討 in vitroモデル作製に使用した形状データを用いて数値解析をし,数値解析結果と比較した.断面の速度分布および流線の様子は定性的に一致していたが,高壁面せん断応力の部位については差異があった.
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