研究概要 |
気泡流動を用いたエアリフト型動物培養細胞槽の生産性向上のために,(1)「上昇気泡挙動」と(2)「細胞の輸送現象」の見地から研究を行った.均一気泡流動を実現するためには,最適な気泡数密度すなわち,気泡径および気泡間隔を決定する必要があり,その基本要素である単一で上昇する気泡と相互作用を及ぼす複数気泡の挙動に着目した.界面活性剤の影響が気泡挙動には非常に重要となってくるために,まず超純水を用いた実験装置を構築し超純水中における気泡挙動を観察した.次に界面活性剤の影響が無視し得るシリコンオイル中に紫外線誘起フォトクロミック染料を溶解し,紫外線シート光により誘起された着色面内を通過した気泡の後流の観察に成功した.特にsingle threadおよびdouble threadの形状を観察し,気泡がジグザグ運動と螺旋運動を行う場合には,double thread型後流の変動の様子が異なることを確認した.さらに,double thread型後流の初生形成過程の観察に成功した.気泡が反発・合体する際にも気泡後流が重要な役割を果たしていることを観察した.気泡下部に成長する渦輪同士の干渉およびdouble thread型の後流の干渉により,衝突後の気泡挙動は大きく影響を受けることを確認した. また,細胞の輸送現象を評価するために牛関節軟骨由来細胞を単離し,細胞周囲における輸送現象を観察するために高分子ゲル中で3次元培養を行った.細胞活動により細胞周囲には細胞外マトリックスの形成が観察され,細胞代謝による輸送現象をモデル化するために,媒質の分子量および電荷が細胞周囲の輸送現象には大きな影響を及ぼすことを観察した.
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