研究課題
基盤研究(B)
本研究は、核破砕中性子源において液体金属に負荷される圧力衝撃波によって固液界面に生じるキャビテーションの生成メカニズムの解明とキャビテーション気泡の崩壊によって生じる構造体損傷の定量評価、及びマイクロバブルを利用した損傷低減技術の開発を目的として行った。主要な結果を以下に示す。(1)衝撃圧力負荷装置を付加した水銀ループを用いて、ガス気泡注入によるパルス圧力負荷に伴う圧力応答、及び損傷低減化に関する実験を行い、衝撃圧負荷時に発生する負圧が低減されると共に、損傷が著しく低減されることを確認した。(2)米国ロスアラモス研究所の陽子加速器を用いた陽子線入射実験を実施し、水銀流路壁面の変位速度がマイクロバブル注入により低下することを確認した。(3)力学的非平衡状態における気泡の体積運動、気泡収縮時の内部気体の温度上昇による周囲流体への熱散逸を考慮した解析を行い、マイクロバブルの混入による圧力上昇の緩和、及び圧力波の分散と減衰等の影響に関する知見を得た。(4)音響式気泡計測装置の気泡径計測および気泡率計測に対する問題点の究明を水一空気系で行い、音響式計測では大径気泡(直径100μm以上)の存在について過大評価する傾向、またバルクの気泡率について過小評価する傾向にあることを光学的手法との比較から明らかにした。(5)高輝度X線による気泡可視化実験をSPring-8で行い、水銀中におけるガス気泡生成に関する固体液体界面の影響を明らかにし、気泡上昇方向に対して平行な水銀流れを与えることで、衝撃圧低減に有効な100μm程度の微小バブルが生成可能であることを示唆した。なお、制御可能なガス気泡の水銀注入法の確立、及びステンレス鋼の水銀中における疲労強度劣化に関する機構解明が今後の課題として残された。
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