研究課題
本研究は、様々な熱源によって加熱された赤外線放射体表面近傍に生ずる近接場光領域に、真空ナノスケール隙間(ナノギャップ)を隔てて熱光起電力電池(Thermophotovoltaic Cell ; TPV Cell)を向かい合わせ設置し、その領域の高電界強度を利用することで高い発電密度を得ようとするものである。既存のTPV電池(フラウンホーファー研究所製)の表面には高さ4μm、幅20μmの金電極が60μmのピッチで配置されている。そこで、接触を避けるためにタングステン放射体表面には溝が設けてある。長さ8mm、幅2mmの放射体表面を、高精度マイクロメーターにより15μm程度まで近づけると形態係数が1に近くなり、それ以下に近づけても出力は増大しない。しかし、隙間4μmまで近づけたとき、出力が低下した。その後、出力は得られなかったので、電極に接触し電池が破損したものと推察された。この電極がないTPV電池を独自に製作するため、ロードロックチャンバーを接続した簡易薄膜装置を導入した。基板のGaおよびSb、さらにp型半導体作製用のドープ材としてBeを選定し、それらの坩堝を装着した。本年度はその真空度を確認し、2.7×10^<-7>Paと、電池作製にはまずまずの真空度を達成した。さらに、GaSb系のTPV電池は、波長1.8μm以下の電磁波を電力に変換できるが、それより長い波長の電磁波は変換できない。そこで、金属放射体表面にナノスケールのキャビテーを多数設け、光導波管の原理により放射光の波長選択を試みた。表面研磨されたNi表面の2mm×2mmの領域に、縦横500nm四方、深さ500nmのキャビテーが幅250nmの壁を隔てて周期的に作製されている表面を用意した。このサンプルを真空容器内に入れて裏面から炭酸ガスレーザーにより1000Kまで加熱した。分光測定の結果、Niの鏡面の放射率に比べて、キャビテー幅が半波長に等しい波長1μmより短い波長の放射率が高くなることが明らかとなった。
すべて 2006 2005
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第43回日本伝熱シンポジウム vol.3
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Japan/U.S. Joint Seminar, Proceedings of Nanoscale Transport Phenomena
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