研究概要 |
本研究では,走査型熱顕微鏡(SThM)上で,ナノスケール空間分解能と定量性を備えた局所熱伝導率計測法を開発することを目的とし,多機能カンチレバープローブを製作し,実験的に評価した。 多機能カンチレバープローブは,厚さ2ミクロンの酸化シリコンを基板とし,先端部に接触部の温度を計測する接触熱電対の電極,プローブを流れる熱流計測用のサーモパイル,温度計測用の薄膜熱電対,プローブ加熱のための薄膜ヒータ,熱流計測の較正用ヒータを備え,それらが長さ600ミクロン以下に集積されたものを開発した。本多機能カンチレバーでは,薄膜熱電対やサーモパイルの較正がプローブ上で行える工夫を導入したことにより,微細加工プロセスで作成されたセンサに共通する感度較正のあいまいさを排除することが可能となった。 多機能カンチレバープローブを原子間力顕微鏡へ搭載し,性能評価を実施した。本プローブでは,計測環境が1E-4Pa以下の真空であれば,熱フィードバックを行いサブミクロンスケールで試料表面温度を計測できる能動温度計測法が実施できる。また,プローブ先端部のヒータを発熱させ,接触部を通じて試料へ伝達される熱量の大小を可視化することで,高空間分解能な熱コンダクタンス画像計測が可能なことが示された。さらに,試料表面に金等の薄膜をコーティングし,プローブ先端の電極との間に接触熱電対を構成することで,接触部界面の温度をモニターすることができる。これにより,接触コンダクタンスと接触温度の局所同時計測が可能であり,定量的な局所熱伝導率計測が行えることが示された。
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