研究概要 |
今年度は,マランゴニ対流現象をより的確に調べるため,重力の影響を排除したマイクログラビティ実験が可能となる宇宙ステーションでの実験を実施することが出来た.国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」では,今年度から科学実験の供用が開始されたが,我々の実験は,「きぼう」における最初の科学実験として実施され,テレビ,新聞などの各種メディアにも広く報道された.実験では,液柱内に発生する温度差マランゴニ対流を観測し,とくに地上では実験が出来ない長い液柱(長さ60mm)を形成して,振動流への遷移条件や,表面を伝播する温度波を観測することに成功した.これらは,世界的にも初めての成果であり,本研究代表者が主催して世界の専門家を集めて開催した国際会議IMA4(International Marangoni Association4)において発表し,国際的にも非常に高い評価を得た. 実験の過程で液柱が分離し,直径30mmの半球状の液滴が形成されたので,これを用いて液滴と固体面の再付着実験を実施した.結果は,地上実験から得られていたスケーリング則の予測に反し,温度差を付加しても,直ちに固体面に再付着するという結果が得られた.この現象は,表面張力支配下における固体面の再浸潤問題として,地上におけるマイクロスケール液滴の挙動の解明に,重要な情報を与え得るものとなった. 今年度は,当該課題の最終年度であったが,宇宙におけるマイクログラビティ実験を実施することが出来,科学的にも,宇宙実験技術としても,貴重な結果を得て,終了することが出来た.
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