壁乱流の実験には主流の乱れを数パーセント程度に保てる低乱風洞が必要である。本研究の実験には望月が現有の低乱風洞を用いた。この風洞には壁面せん断応力の直接測定プローブが設置可能であり、放電アクチュエータPSJA)作動時と非作動時の壁面せん断応力の差を計測した。その結果、PSJA直後の後流では壁面せんだん応力が減少し、その後、増加することが始めて分かった。これは後流速度分布の計測結果などから推測されたことではあるが、乱流境界層内で応力が減少することを直接計測できたことの工学的意義は大きい。 18年度は他に、17年度に作成したアクチュエータおよび制御系の開ループ特性の計測を行なった。17年度に購入した流れ解析ソフトで数値シミュレーションを行い、壁乱流制御制御特性を調べた。乱流解析には非圧縮解法を用いることが一般的であるが、電極近傍では大きな圧縮力が働くため定量的高精度に駆動力を解析するためには圧縮性を考慮する必要がある。圧縮性流れ解析の結果、真空の比誘電率を用いても誘電力の体積力を妥当な制度で見積もれることが実験結果との定量的比較で明らかになった。 17年度に購入した高速信号処理装置を現有の熱線計測システムに加えて、遅延フィードバック制御を施しながら交流速度分布を計測することに成功した。その結果、遅延フィードバックにより制御に必要なエネルギー(電力)を、科ループ制御の場合と比較して最大50パーセント程度まで減らせることが分かった。 熱画像カメラで温度測定を行った結果、PSJA自体が60度程度に過熱されていることが分かった。今後、流れ制御アクチュエータとしての実用性を高めるためには、電気的エネルギー効率を改善が必要であることが分かった。 湿度によるPSJAの作動特性の違いを調べるため、オリフィスを使った流量計測を行った。その結果、ばらつき誤差は大きいものの、湿度の減少とともにPSJAの駆動力は増加することが分かった。
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