研究概要 |
抄紙機や印刷機の種々のロール系のように,ロールが他の系と大きな線圧の下で接触を保持しながら回転する接触回転系においては,激しい振動を伴うと同時にロールの表面に周期的な変形パターンが形成される現象がしばしば発生する.研究代表者らは,これを接触回転系におけるパターン形成現象と呼び,最も支配的な発生原因は線形時間遅れ系の不安定振動であると捉えて,防止対策の確立を目指して研究を行ってきた.その結果,多くのパターン形成現象が上記のメカニズムで説明可能であることが明らかになったが,防止対策が完全に確立されているとは言い難いのが現状である.よって,研究目的を実現するために,平成17年度はおもに次の項目について研究を実施した. 1.多自由度の接触回転系に対する動吸振器の最適設計法の開発 多自由度系の最も基本的な例として2自由度系および3自由度系を対象に以下の開発を行った. (1)1自由度系の最適設計法のために新たに開発した時間遅れ系に対する安定判別法を多自由度系に拡張した. (2)多自由度系に対しては,複数個の動吸振器が必要でありそれぞれが互いに与える影響を考慮する必要がある.そこで,それらの影響を機械本体のパラメータに対するロバスト性も含めて検討した. (3)動吸振器の個数や設置位置をも含めたトポロジカルな最適化を行う必要があるため,新しい安定判別法と遺伝的アルゴリズムとを結合して,トポロジカルな最適設計法を開発した. 2.実験装置の設計 パターン形成現象に対する動吸振器の防止効果とその最適設計法の有効性を検証するために,抄紙機や圧延機の内部で利用されているロール系をモデル化した自由度が可変な直列型多段ロール系の実験装置を設計した. 3.新しい安定判別法の最適構造設計法への応用 上記1.の動吸振器の最適設計法を基に,パターン形成現象が発生し難い最適構造設計法を開発した.
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