研究課題/領域番号 |
17360110
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
三澤 弘明 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30253230)
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研究分担者 |
JUODKAZIS Saulius 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (80332823)
上野 貢生 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (00431346)
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キーワード | 金属ナノ周期構造 / ナノギャップ / 光電場増強 / 局在表面プラズモン / 表面増強ラマン散乱 |
研究概要 |
本年度は、昨年度最適化された構造設計に基づいて作製された金属ナノ構造を用いて、表面増強ラマン散乱分光特性について詳細に検討を行うと共に、新たに半導体加工技術やレーザー干渉露光法により高い再現性を有し、且つ繰り返し測定が可能なチップの作製や構造の大面積化(多検体アレイ検出)を実現する作製方法の確立、或いはDNA分子の高感度検出を行い分析チップとして有用であることを明らかにした。さらに、本研究では、新たに顕微ラマン散乱計測系に水浸対物レンズ(x100,N.A.=1.0)を用いてin-situで有機分子からの表面増強ラマン散乱スペクトル計測を行う測定システムを構築し、定量的に表面増強ラマン散乱計測における増強率を見積もることが可能になった。ピリジン分子の表面増強ラマン散乱強度の濃度依存性のプロットから、金属ナノ構造表面にピリジン分子が吸着している数(被覆率)をLangmuir吸着等温式によるフィッティングと吸着平衡定数の文献値から概算し、ラマン散乱強度から増強率を見積もったところ、バルク(溶液中のラマン散乱強度)に比べて10の10乗倍のラマン散乱強度が得られていることがわかった。時間領域差分法(FDTD法)により、作製した構造(設計)の光電場増強を数値シミュレーションしてみたところ、10の4乗倍の光電場増強が局所的に得られていることが算出され、表面増強ラマン散乱の増強率は、理論的に電場強度の2乗に比例するというこれまでの報告から、電磁的な増強効果は10の8乗倍、化学的な効果が10の2乗倍得られていることが本結果から見積もられた。この値は、ピリジン分子の表面増強ラマン散乱における化学的増強効果が10の2乗倍作用するという妥当的な数値であり、本研究は電磁的増強効果だけでなく化学効果についても詳細に検討を行うための実験系を構築することに成功したと言える。
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