研究概要 |
本年度はDNAの周期ナノメカニズムを構成するため,DNAの対合効率を向上するための研究を行なった.具体的には,核酸配列について1度のハイブリダイゼーションプロセスで確実に目的の2本鎖が形成されるように,ユニットDNAの配列中に繰り返しが少なくなるようなコンピュータシミュレーションを開発した.ここでは塩基配列中に6個以上の塩基配列の重複が0となるよう,乱数発生により塩基を置き換えて最適化する.また,DNAユニットの向きや結合順を指定するため,付着末端部において従来の回文型塩基配列に変わり非回文型の塩基配列をもちいた.さらに,ハイブリダーゼンーションのプロセス自身も,2本鎖の対合,付着末端の対合の2段階に分割する工夫を行なった. これらの検討により,従来の20倍程度のDNAブロックの結合を行なうことができるようになり,7000bp,およそ2.3μmの長鎖DNAが出来ていることを,電気泳動により間接的に確認した.また,直径5nmの金粒子を用いてDNA2本鎖上に位置決めを行い,80bp(27nm)の周期構造ができることを原子間力顕微鏡の画像により,確認することができた.ただし,金粒子の位置決め効率が100%ではなく,ところどころに歯抜け状の場所があることが残された課題である.これら基礎的な確認の後,従来の金粒子に代わり50nmの直径を持つ磁気ビーズの位置決めを試みた.この際,DNAの位置決め部分のピッチを長くする必要があるため,スペーサを挿入できる構成に改めた.これより305bp(100nm)のブロックを複数のDNAのライゲーションにより製作し,磁気ビーズを周期的に位置決めする構造とした. また,IHFタンパク質がDNA中の特定の塩基配列を自己認識し,DNAを折り曲げる性質を用いて,認識部分を周期的に組み込んだ長鎖DNAを製作し,タンパク質とDNAによる折り曲げ構造を製作するプロセスを考案し,基礎的な実験を試みた.
|