研究概要 |
本研究では,生体情報物質であるDNAとバイオテクノロジーによりナノメカニズムを創製する手法の提案,実験的確認を行うことを主目的として,以下の項目に取り組んで成果を得た. 1.DNAによる周期構造創製技術:DNAは2重螺旋内の拡散配列が0.34nmピッチであるため,それ自身が非常に高い位置決め分解能を持つナノメカ部品として機能する.そこでナノメカ創製の手始めとして,ナノ粒子を標識したDNA断片をレゴブロックのように連結する一次元周期構造を創製する方法を提案した.この構造を実験的に実証するとともに,塩基配列の最適化により創製の歩留まり向上,長鎖化を図ることが出来た. 2.タンパク複合体による分子ナノメカニズムの創製技術:DNAを用いたナノ構造にセンサやアクチュエータなどの機能性を持たせるため,タンパク質を用いた複合構造の創製を試みた.始めにIHFタンパク質を用いたNAの折り曲げ構造を提案し,細胞培養により得られたタンパク質を用いて,DNAの折り曲げ構造を実証した.次にRecAタンパク質を用いてDNAを任意の場所で分岐する構造を提案し,実験による確認を行いRecAのDNA二本鎖上への位置決めを確認した. 3.環状DNAによるナノ構造創製とDNAの機械的特性評価:上記2項目で用いた直鎖DNAに代わり,環状DNAを用いたナノ構造体を試作する手法を提案し,直径27nmの環状DNAを2個連結したプラスミド眼鏡を実現した.また,ナノメカとしての力学特性把握のため,コイルスプリングとこれを連結する微小スプリングからなるDNAの力学モデルを構築し,実験データとの整合性を検討した結果,引っ張り時の挙動をうまく説明するモデルとして機能することを確認した.
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