研究概要 |
レーザ誘起蛍光(LIF)法を用いて放電プラズマによる有害ガス処理リアクタにおける主要なラジカルであるOHの計測を行った。波長282nmのレーザ光により基底状態にあるOHラジカルを励起し,309nm近傍のLIF信号を時間的・空間的に分解して計測した。ギャップ長3cmの電極間における大気圧直流正極性ストリーマコロナ放電において,ストリーマの特徴(枝分かれ,枝の太さと長さ,先端の状態等)を明らかし,OHラジカルとの関係を調べた。また計測を行ううえで重要となるストリーマ放電の安定した発生に関する新しい制御方法についても開発した。その結果,OHラジカルは定常状態にある直流ストリーマコロナ放電中においては,ストリーマパルスとのタイミングを取ることなくLIF信号を観測することが可能であり,それにより実際のガス処理を想定した状況下でのOHラジカルの評価が可能であることが明らかになった。基底状態にあるOHラジカルはストリーマ放電の領域内部で生成し,数kHz以上で繰り返すストリーマによるパルス状の放電では,次のストリーマの発生までLIF信号は減衰しながらも継続していることがわかった。さらに,OHラジカルの生成には放電で発生したオゾンがLIF計測のための紫外パルスレーザで解離して,LIF信号にわずかに影響することがわかった。リアクタ内のガスの速度が遅い場合には2次的な流れが支配的となり,長寿命のオゾン分布に影響することがOHラジカルへの干渉信号の分布からも明らかになった。処理ガスとしてNOをリアクタに導入するとOHラジカルのLIF信号は速やかに低下した。このような知見は今後の計測の精密化やモデリングにおける新たなデータとして有用であると考えられる。
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