研究概要 |
本研究で提案する低電流磁化反転技術の基本原理をひきつづき確認するとともに,より効果が大きく表れるように材料組成や作製技術,加工技術などに改良を加えた。このことにより,磁化容易方向を機械的応力の印加により膜面垂直方向から面内方向に完全に回転させることに成功し,この条件を用いて実際に応力印加と磁場印加を同時に加えた反転シーケンスを設計し,最終的にはもともとの垂直磁化膜の保磁力の1/6という弱い磁界で反転できる薄膜をえることに成功した。磁歪定数の大きな垂直磁化膜の候補として,Dy_x(FeCo)_<1-x>膜について,実際に応力を機械的手法で導入したときの磁化特性の変化,また応力の大きさ・方向に対する線形性・感度や膜厚比などのサイズ効果などについて詳細な検討を行った。薄いディスク状カバーガラス基板の中央部に異常Hall効果を測定する垂直磁化膜を作製し,基板中央部への面法線方向への変位を加えた状態にすることで膜への面内方向の応力を印加することができるようにし,また変位量を可変できる機構を作製し,印加応力量と磁化特性の変化を系統的に観測することに成功した。これを強磁性膜自身の異常Hall効果で磁化特性を観測することにより強磁性Dy_x(FeCo)_<1-x>膜への応力印加が磁化反転磁界を大きく低下させるのみでなく,膜面垂直方向から面内方向に完全に回転させることに成功した。このことにより印加磁界を約1桁小さくしても磁化反転が引き起こせるような磁化反転用の応力・磁場印加シーケンスを提案し,実際に1/6程度の弱い磁界で反転できることを確認した。膜組成としてTbを加えることにより磁化特性変化も大きくすることができた。また機械的な応力印加では膜内の応力が不均一になることで,磁化特性変化の膜面内での不均一さが誘導され,一種のサイズ効果が引き起こされているなどの重要な知見を得ることができた。
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