提案する発光領域として多数の量子ドットが組込まれた微粒子からなる新しい蛍光体開発について、まず、初年度に得られた知見に基づいて試料作製反応炉を設計し、これを完成させた。この反応炉を使用して、提案の粒子の形成に必要な気相合成の各プロセスについて以下にまとめる成果を得た。 1.AlNコア粒子の生成について 加熱・蒸発させたAlと窒素原料のN_2ガスを1100〜1250℃で反応させてAlN微結晶粒子の合成を行った。1100℃の反応では、得られた試料はAlN粒子と金属Alの混合物であったが、1150℃以上にすることにより反応が促進され、AlN単一相の試料を得ることができた。結晶性についても、反応温度の上昇に従い向上し、1200℃のとき最も良好なAlN粒子が得られることを明らかにした。 2.AlNコア粒子周囲へのGaN層の形成について GaC1とNH_3を原料として用いる第2段のプロセスにより、1で生成したAlN粒子表面上へのGaN層の堆積を行った。AlNコア粒子の生成温度が昨年度までの1100℃の場合には、得られた試料のフォトルミネッセンスおよびカソードルミネッセンス(CL)測定では、GaNのバンド端発光に加えて欠陥に起因すると考えられる青色発光を示したが、結晶性の観点から最適な1200℃でAlNコア粒子を生成することにより、バンド端が支配的な発光を示すまでに特性を改善することができた。 3.GaN粒子周囲へのAlN表面層の被覆について AlCl_3とNH_3を原料として用いる第3段のプロセスにより、GaN粒子表面へのAlN層の形成を試みた。20Kにおける低温CLの評価から、AlN層の表面パシベーションの効果が示唆された。
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