第一段階としては、ムラサキイガイ等の接着タンパクのアミノ酸の配列を調査し、海水中などでも船底等に強固に付着する接着のメカニズムを明らかにし、最適な材料系、官能基配列を絞り込むことを試みた。調査の結果、デカペプチドとよばれる十個のアミノ酸からなる単位とデカペプチドの中央の四つのアミノ酸がぬけたヘキサペプチドが何十回も繰り返しならんでいる構造が明らかとなり、リジン、セリン、チロシン、ドーパミン、オキシプローリンなどのアミノ基や水酸基などによる水素結合が接着力に大きな寄与があることが明らかとなった。 第二段階として従来タイプのエポキシ系やシラン系の接着剤に、第一段階で決定した最適な材料系、官能基配列を反映させた高機能光学接着剤の合成(研究協力者:(株)横浜ゴム 接着研究グループ主幹 吉川篤志 並びに (株)日本化薬 機能材研究所 副主任研究員 川田義浩)を行い、光学特性を明らかにすると共に、高温高湿放置試験/温浴試験による機械強度の劣化試験によって光学接着剤の耐湿性/耐水性の評価を行った。 その結果、現在用いられている代表的光学接着剤の劣化に至る中央値(メディアン)が90℃-85%の条件で平均177時間であるのに対し、本研究による新規開発の接着剤のエポキシ系では732時間で約4倍、シラン系では4571時間で約25倍と大きな耐湿性改良に成功し、電子情報通信学会等で発表し光受動部品の専門家の間で大いなる反響を得ると共に、個別に興味を持って頂いた光ケーブルメーカや光コネクタメーカに紹介し実用化に向けたカスタマイズの活動を開始した。
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