第三段階としてDNAの塩基配列の設計から、天然の水生生物の保有するものに類似の接着タンパクを合成する机上検討を行った。結果として、天然の水生生物類似接着タンパク数mgを合成するのに20数万円の費用が見込まれることから、低コストな実用的接着剤を得ることは困難との結論に至った。第四段階として、平成17年度に得られた合成高機能接着剤の中から、最強の耐湿性/耐水性のものを光デバイスの実装に適用し、光デバイスの長期信頼性の評価を行った。 (1)日本化薬社と共同で開発したKAYATORON A1002SおよびA-1005Sを、昭和電線デバイステクノロジー社、本多通信工業社、日本電気硝子社の各デバイス(光固定減衰器、光コネクタ、結晶化ガラスフェルール)への光ファイバ固定に適用し、三田地研において長期信頼性試験をIECの光受動部品の寿命測定法(高温高湿放置試験85℃-85%-960hr、温浴試験6週間)に準拠して行った。伝送損失や、反射損失においては試験時間中で特に問題は生じなかった。 (2)上記信頼性試験においては、比較サンプルとして従来の汎用光学接着剤である、エポテック353NDで組み立てられたデバイスも同時に併置して行った。試験前後で、光デバイス端面の光コネクタ形状測定を行い、接着剤の劣化による光ファイバ引き込み量を比較したところ、最適固化条件によっては、従来の接着に比べ大幅に耐水性が改善されることが確認できた。また、従来接着剤の最も問題とされているかぶれ等の問題解決や、少なくとも無臭化が達成できることが明らかとなり、本結果を光デバイス関係の国際会議であるIEEE-LEOS2006で口頭発表し、大きな反響を呼んでいる。2007年7月15-20のゴードンリサーチコンフェランスには本件の発表で招待参加を求められている。 (3)さらに、横浜ゴム社と耐水性を抜本的に改良したFRA-40についても同様のデバイス適用試験を開始しており、最終年度である19年度には実用的超耐水性光学接着剤を世に送り出す予定である。
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