研究概要 |
従来タイプのエポキシ系の改良や新規のシラン系の接着剤を開発し、その光学特性を明らかにすると共に、高温高湿放置試験/温浴試験による機械強度の劣化試験によって光学接着剤の耐湿性/耐水性の評価を行った。現在用いられている代表的光学接着剤の劣化に至るメディアン(MIF)が90℃-85%の条件で平均177時間であるのに対し、本研究による新規開発の接着剤のエポキシ系では732時間で約4倍、シラン系では4571時間で約25倍と大きな耐湿性改良に成功した。これら新規開発合成高機能接着剤(エポキシ系のKAYATORON A1002SおよびA-1005S、ポリシラン系のFRA-40)を、各種光デバイス(光固定減衰器、光コネクタ、結晶化ガラスフェルール)への光ファイバ固定に適用し、長期信頼性試験をIECの光受動部品の寿命測定法(高温高湿放置試験85℃-85%-960hr、温浴試験6週間)に準拠して行った。伝送損失や、反射損失においては試験時間中で特に問題は生じなかった。また、従来接着剤の最も問題とされているかぶれ等の問題解決や、少なくとも無臭化が達成できることが明らかとなった。さらに、フェール端面三次元形状測定により、光ファイバ引き込み量の測定から接着剤の長期信頼性の評価も行った。本結果を光デバイス関係の国際会議であるIEEE-LEOS2006や、国内学会(2008年4月の電子情報通信学会の信頼性研究会の招待講演)や、海外での国際会議(2008年5月,IEEE 58th ECTC)での論文発表を行い、内外での評価を得、今後実用化をめざし、部品ごとのカスタマイズを進めた。 ムラサキイガイ等の天然の水生生物類似接着タンパク数mgを生合成するのに20数万円の費用が算定され、低コストな実用的接着剤を得ることは困難との結論に至った。類似のアミノ酸配列をもつ入手容易なゼラチンに、貝殻成分を添加して、その耐熱性と耐湿性の向上を図った。成分分析の結果有効成分として硫黄を特定、耐熱性向上のメカニズムを明らかにした。これらは、都市部での温暖化に対する環境対策としてのビオトープなどへの接着剤への応用展開が可能となっている。
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