研究概要 |
電力ケーブルの絶縁材料として広く用いられている架橋ポリエチレンの交流高電界下での電気伝導メカニズムを、電荷挙動という観点から詳細に調べる目的で、電界発光と損失電流の二つの観測を同時に行うシステムの構築を進めた。電界発光観測システムの大まかな設計を行った。この設計について、高分子絶縁材料の電界発光に関する研究で実績があり研究協力関係にあるカナダ国立研究所のBamji博士を10月に訪問し、特に高圧チャンバーの高圧端子部分の設計や試料ホルダーの試料との接触部分の設計についてアドバイスを頂いた。その後、光電子増倍管(浜松ホトニクス社製R943-02)、高性能電子式冷却器(浜松ホトニクス社製C4877)、高感度CCDカメラ(浜松ホトニクス社製C9299-02)を発注した(3月に納入)。また、これらの電界発光観測装置の機種選定後、チャンバーの具体的な設計に入り、日立電線メクテック社製の専用高圧チャンバーおよびサンプルホルダーを発注した(3月に納入)。これらの装置を組み上げて、低密度ポリエチレンフィルムに金蒸着を施した試料で基本的な動作確認を実施した。その結果、高純度窒素ガス0.2MPa下で20kV/mm以下の電界まで部分放電を生じないで測定可能なことを確認した。今後、細かい調整を行い、電界発光と損失電流の同時観測を目指す。 研究成果の公開については、10月に、アメリカ合衆国ナッシュビルで開催されたCEIDPに出席し、2件の研究成果("Transient response of various kinds of high field alternating signals for low density polyethylene", "Considerations for conduction mechanisms under AC high field for low density polyethylene")を報告している。さらにRensselaer工科大学のJ.Keith Nelson教授の研究室を訪問し、ナノコンポジット材料の研究について意見交換を行った。3月には横浜国立大学で開催された平成18年電気学会全国大会に出席し、2件の研究成果(「台形波印加時のLDPEの損失電流の電極金属依存性」、「交流高電界下におけるMgO/LDPEナノコンポジット材料の電気伝導特性」)を報告した。これらの研究成果は、交流電界下での電気伝導を瞬時電界上昇率、電極金属依存性、ナノコンポジット材料の影響という観点から損失電流に焦点を絞り調査したものであり、今後、電界発光現象についても調査し、電荷挙動という観点から交流高電界下での電気伝道メカニズムの解明を目指す。
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