研究概要 |
テラヘルツ波帯は,波長にして3mmから30μm程度に相当しマイクロ波と遠赤外光との中間に位置する広大な電磁波スペクトルであり,近い将来に超高速大容量通信の基幹システムを支えることが期待される周波数資源のフロンティアであるとともに,テラヘルツ波が電波(透過性)と光(直進性)双方の優れた特徴を兼ね備えていることから透過イメージングや,この帯域に在る蛋白質やDNAといった生体分子に由来する指紋スペクトルを利用して生体物質の検出など幅広い応用が期待されている。本研究は,YBCO高温超伝導体薄膜を用いたジョセフソン接合素子を検出器として用いテラヘルツ帯高周波スペクトルを検知できる高感度なイメージング用検出器の実現を目的としている。今年度は,MgOバイクリスタル基板上に作製したジョセフソン接合に,平面型対数周期型アンテナとコプレナー導波路結合型スロットダイポールアレイ(CPW-fed SDA)を集積した検出器を用いてそれらの応答周波数特性,感度,ダイナミックレンジを評価した。我々は,前者において接合特性の最適化により最高で30,000V/Wの検出器感度と帯域幅1Hzの測定に対して38dBmのダイナミックレンジを得ることに成功した。しかしながら,検出器にテラヘルツ波を導入する準光学導波システムを含めたシステム全体の検出感度は600V/Wと低い値に止まっていた。我々は,感度低下の大きな要因がアンテナの大きな給電インピーダンスと検出器の低いインピーダンスの不整合であることを突き止め,より給電インピーダンスの低いCPW-Fed SDAを集積した検出器を開発した。今年度は,新たに導入したサブテラヘルツ源を利用してこの検出器の検出周波数特性を精密に測定し,数値シミュレーションにより予測されていた共振特性と検出感度の周波数特性を明らかにした。
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