研究概要 |
平成18年度までの研究によって,コプレナー導波路結合スロットダイポールアレイ(CPW-fed SDA)とバイクリスタル人工粒界型高温超伝導ジョセフソン接合(GBJJ)との集積化することで達成された総合感度6dBの改善には,接合とアンテナのインピーダンス整合の改善が大きく寄与した。最終年度に当たる平成19年度は,これまでの成果を基盤として,感度のより一層の向上を図るとともに,実用化を目指す上で,用途に応じて広帯域な分光感度特性を活用できる従来の平面型対数周期アンテナ(LPDA)を利用することも視野に損失改善に取り組むとともに,LPDAとGBJJを集積化した検出器の分光感度特性を測定した。総合感度を制限している損失要素の一因としてテラヘルツ波を検出器に集光する高純度シリコン製の超半球レンズに着目し,直径の異なるレンズと検出器マウントを新たに製作して,レンズ直径が総合感度に与える影響を0.12〜0.24THzの範囲で測定した。その結果,レンズ直径を7mmから10mmに拡大することで総合感度が全周波数範囲で約4dB,15mmに拡大させたときには約5dB向上することを明らかにした。アンテナの有効放射面積を考慮すると,準光学系に由来する損失はこれによりほぼ限界まで改善されたと判断できる。 最終年度に行った準光学系の改善過程において分光感度特性の評価できた0.12〜0.16THzの範囲において感度に約7dBの変動が観測された。LPDAは広帯域な特性が期待できるアンテナとして多用されているが,検出器と集積した状態でその分光感度特性を評価した報告は少なく,電磁界シミュレータを用いて感度変動の原因を引き続き検討している。本研究の成果は,その結果と併せて平成20年8月に米国において開催される応用超伝導国際会議において発表する予定である。
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