研究概要 |
本研究は,発光・光増幅特性を有するナノ結晶シリコン(nc-Si)薄膜と,フォトニック結晶(Photonic Crystal : PhC)構造とを融合させることによって,高効率な新規発光・増幅素子を実現することが目的である。平成17年度は,その第一段階として,干渉露光法による1次元PhCとの融合,および電子ビーム露光法による2次元PhCとの融合を試みた。 前者の実験では,赤色発光するnc-Siスパッタ薄膜と周期780〜800nmの1次元PhC結晶とを組み合わせることによって,波長800nm付近にピークを持つフォトルミネッセンス(PL)スペクトルの半値全幅を約55%狭窄化することに成功し,発光効率を向上できる可能性を示した。後者の実験では,nc-Si薄膜に,電子ビーム露光とプラズマエッチングにより三角格子状に周期孔(設計周期302nm)を加工し,2次元PhCスラブ構造を作製した。このPhCには,中心に点欠陥が設けてあり,レーザ発振を狙った構造となっている。基礎的な測定の結果,PLスペクトルがPhCの影響を受け,半値全幅が約35%狭窄化されていることを確認した。 更に,nc-Si薄膜の発光特性を制御することを目的とし,スパッタ法によりアモルファスSi/SiO_2超格子薄膜を作製した。この薄膜では,nc-Siを多層膜状に形成することによって,ナノ結晶のサイズを制御できる可能性がある。Si,SiO_2の1層あたりの推定厚さがそれぞれ1.1nm,2.8nmの試料(100周期積層)において,アニール温度を1150℃としたところ,赤色のPLが得られ,一方でアニール温度1200℃では,紫外域のPL(波長380nm付近に発光ピーク)が得られた。我々が知る限り,アモルファスSi/SiO_2超格子薄膜から紫外発光が観測された前例はない。この薄膜とPhCとを融合させれば,新しい紫外発光素子の実現が期待できる。
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