研究概要 |
本研究は,発光・光増幅特性を有するナノ結晶シリコン(nc-Si)と,フォトニック結晶(PhC)とを融合させることによって,高効率な発光・増幅素子を実現することが目的である。平成18年度は,まずnc-Siの光増幅特性の向上を目指し,イオン注入法によるnc-Si形成及びnc-Siへの希土類ドープを試みた。更に,nc-Si薄膜とPhCとの融合の初期検討を行い,発光特性を改善できる可能性を示した。以下でそれぞれについて報告する。 Siイオン注入によって形成されるnc-Siは,赤色から近赤外域の発光し,かつ100cm^<-1>というIII-V族半導体に匹敵するほどの大きな光利得が観測されていることから,発光デバイス用材料としての応用が期待できる。今回我々は,溶融石英基板にSiイオンを注入し,その後1100℃〜1250℃でアニール処理を行うことで,波長400nm付近をピークとする青色発光帯が発現することを新たに見出した。今後,更なる発光強度向上の検討および光利得の評価を行っていく予定である。 nc-Si薄膜にエルビウム(Er)をドープすることで,波長1.5μm帯において高効率な発光・増幅作用が得られることが知られている。そこで我々は,SiとSiO_2,及びEr_2O_3を同時スパッタしてErのドープを試み,空気中で550℃のアニール処理後,Arレーザ(波長488nm)での励起により波長1505nmに発光ピークを確認した。現在,発光・増幅効率の向上のため,作製条件の最適化を進めている。 更に我々は,SiとSiO_2をnmオーダーで交互にスパッタして形成したnc-Si薄膜をコアとしたスラブ導波路を作製し,それにPhC構造を付与することで,近赤外域にピークを持つ発光スペクトルの半値幅を12%程度狭窄化することに成功した。この結果は,nc-Si薄膜からの発光波長の選択性や発光効率を向上できる可能性を示している。
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