研究概要 |
本年度はまず水晶振動子ガスセンサの感度向上を行った。自己組織化lipopolymerと自己組織化脂質膜を電極表面に化学吸着させるとともにその上に物理吸着層を持つ新しい感応膜構造を提案し、センサの高感度化を試みた。その結果、数十ppbの匂い(ブタノール)濃度検出が可能であることがわかった。これは人の嗅覚閾値より約2桁低く大幅な感度向上を達成した。 また、短時間フーリエ変換を用いた方法により濃度変動に対してロバストなリアルタイムセンシングが可能なことを前年度示したが、本年度は温度、湿度の変動があっても安定に識別できる方法を検討した。温度や湿度を変えたデータをニューラルネットワークの学習データに加えて、さらに温度センサと湿度センサをセンサアレイに加えることによりロバスト性が向上し、従来法で困難なフレーバ間の匂い識別を9割以上の確率で識別できることがわかった。 本年度は最終年度であり、視嗅覚の同時記録再生のデモンストレーションを行った。匂いセンサで識別と濃度定量を行うと同時にカメラで撮影を行い、画像と香りを同時に再生する視聴覚同時記録再生装置を試作した。香り再生には嗅覚ディスプレイを用いた。画像はwebカメラで毎秒ストロボ撮影したもので匂いセンサのデータと同期させて再生することが可能である。この装置を大学祭や産学官技術交流フェア(11/28-30,2007,東京ビッグサイト)で公開実演を行った。サンプル瓶にいれた複数のフレーバを匂いセンサでセンシングして、再生時にユーザに嗅いだ匂いの種類を尋ねたところほぼ正しい答えが得られたので、試作した装置は正常に動作したといえる。さらにアンケート調査の結果、映像だけよりも臨場感が増したと多くの回答が得られた。
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