研究概要 |
巨大磁気抵抗効果やスピントンネル効果を,磁気記録の読み出しヘッドや,磁気ランダムアクセスメモリへ応用する研究が盛んに行われているが,これらの効果の磁気センサーとしての応用についても非常に高いポテンシャルを持つものと考えられる。本研究では,Co/Cu多層膜やスピントンネル素子の磁気センサーへの応用を検討した。本年度は,スピントンネル素子の微細化に取り組み,微細加工プロセスにおける接合部へのスパッタエッチされた金属原子の再付着の問題について,詳細に検討した。その結果,Arイオンによるエッチング時に素子の面をArの入射方向から45度傾けることで再付着が低減できること,また,エッチング後にスパッタチャンバ内で,Ar+O_2で逆スパッタすることで,再付着した金属を酸化とスパッタの効果で,漏れ電流を大幅に低減できることが明らかとなった。一方,Co/Cu多層膜を用いた巨大磁気抵抗効果素子については,メタルマスクを利用して幅100μm長さ1200μmの素子を作製し,これをCMOSインバータを使ったセンサー回路に組み込んで,磁界センサーとしての動作を評価した。その結果,電圧出力型の回路を用いた場合には,外部磁界の変化に対して,0〜1.5[V]の電圧変化が得られた。また,周波数変化型の回路を用いた場合には,ゼロ磁界における発振周波数235[kHz]が,3kOeの外部磁界で,304[kHz]まで増大した。今回は,Co/Cu多層膜の巨大磁気抵抗効果の第一ピークを用いたため,磁界感度としては,高いとは言えない。そこで,Co層をNiFeに変えるとともに,第二ピークを利用する素子の作製を行い,低磁界で磁気抵抗効果が得られることを確認した。
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