研究概要 |
巨大磁気抵抗効果を示すCo/Cu多層膜およびスピントンネル磁気抵抗効果をしめすCoFeB/Al_2O_3/CoFeB/CoFe/MnIrの構成の素子を作製して,その磁気抵抗特性を測定した。 Co/Cu多層膜については,その磁気抵抗比とスパッタ条件の関係を詳細に調べたところ,スパッタガスをArから,原子量の大きいKrに替えることでMRが10%ほど向上することを見いだした。これは,ターゲット表面からの反跳原子のエネルギーが,原子量が大きくなるほど低下するためであることが,エネルギー分析器付きの質量分析器による測定により明らかとなった。また,スピントンネル膜については,フォトリソグラフィを用いて,接合面積が30×30μm^2から5×5μm^2の素子を作製した。当初,素子の特性にばらつきが大きく,再現性に問題があったが,Arミリングによる微細加工時に試料をArイオンビームに対して45度傾けて自転させることにより,再現性が改善され,40%程度の磁気抵抗変化が得られるようになった。これは,斜めエッチングよって,トンネル接合部の側壁への金属の再付着が低減したためと考えられる。 磁気センサー回路については,電圧出力型の回路を検討した。CMOSインバーターによる発振回路の一端にGMRおよびスピントンネル素子を接続し,端子電圧を積分回路を通して増幅した。両者とも,磁気抵抗変化曲線と相似形の出力電圧の外部磁場依存性を示し,0.5〜1V前後の出力電圧が得られた。磁界感度については,Co/Cu多層膜は,層間結合磁界が強いため,出力電圧の変化を得るためには,数十Oeを要したが,スピントンネル膜の場合には,数Oeで出力の変化が観測された。
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