研究概要 |
スピントンネル素子,およびスピンバルブ型巨大磁気抵抗素子を作成して,磁気センサー回路にこれらを組込み,センサー特性を調べた。スピントンネル素子は,8元マグネトロンスパッタ装置により,Ta/CoFe/MnIr/CoFeB/Al2O3/CoFeB/Ta多層膜を作成し,これをフォトリソグラフィのプロセスを2回行なうことにより,幅100μmの電極パターンと20μmのトンネル接合を形成した。一方,スピンバルブ素子としては,Ta/CoFeB/Cu/CoFe/MnIr/Al膜をフォトリソグラフィにより,幅30μm長さ200μmのストリップラインに加工したものを作成した。これらの素子のセンサー特性を評価するために,1kHzの交流磁界(10Oe以下)を発生するヘルムホルツコイルの中央に置き,素子にセンス電流を流して,交流磁界による信号をオペアンプを利用した増幅回路で増幅し,シンクロスコープで観察した。スピンバルブ素子を利用した場合について,自由層の容易軸方向と困難軸方向に1kHzの外部磁界を加えた場合の違いを詳細に測定した。困難軸方向の磁界を検出する場合には,自由層の磁化回転によって磁気抵抗変化が生じるため,面内の異方性磁界に応じた磁界感度が得られる。今回の実験では,10Oeの外部磁界に対して,70mVの出力が得られ,検出感度としては,0.2Oeと地磁気と同レベルの磁界まで検出することができた。一方,自由層の磁化容易軸方の磁界を検出する場合には,磁壁移動によって磁気抵抗変化が起こり,磁化回転より低い磁界変化で大きな出力が得られた。しかし,磁壁抗磁力のために2Oe以下でセンサー出力は得られなかった。そこで,100kHzの交流磁界で磁壁位置を変調することで低磁界側の特性を改善した結果,0.01Oe程度の低い磁界まで検出が可能となった。
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