研究概要 |
ナノ分子の構造,電子状態,原子位置変化を精度良い量子化学計算で高速シミュレーションするために有用な分子軌道法,密度汎関数法,およびこれらを融合した第一原理分子動力学法のプログラム作成と整備,およびMPIによる高並列化を行い,ポリチオフェン(PDT:ドデシルチオフェン)系の機能性ナノ分子の設計と大規模計算を実施する。次世代のエレクトロニクスを荷うことが期待されているナノ分子デバイスに対し,電子の持つ内部自由度(電荷・軌道・スピン)のコントルールを可能とし,新しい機能を持たすべく,非平衡グリーン関数法に基づくデバイス特性解析を行ってきた。その際,構成分子の電子状態解析の結果から強束縛近似パラメータを導出し,ハミルトニアンHおよび境界自己エネルギーに反映させることにより分子構造と材料に依存した量子輸送特性の解析が可能となる。デバイス内部では量子力学的な効果すなわちトンネル現象やエネルギーの離散化,量子干渉効果を表現することも可能であることが明らかになり,本手法にてPDT系分子デバイスの設計が可能となった。解析結果から,PDT系材料の分子デバイスへの応用(トランジスタ)可能性と,シリコン系材料の置換の可能性につき検討する予定である。さらに開発した解析法に数値的厳密対角化法,第一原理全電子混合基底法など効率よく計算するための種々の計算プログラムの作成と整備を行う。
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