研究概要 |
平成19年度に以下の研究を行い、それぞれ目標に掲げた以上の成果を得ている。 1.量子化学計算による分子軌道計算用シミュレータの開発 量子化学計算における原子的強束縛近似に基づくハミルトニアンの自動生成をプログラムを作成し、分子デバイス内の分子軌道、原子軌道に基づく電子状態解析が可能となった。具体的には,最近接相互作用,第二近接相互作用の範囲内で,原子の重なり積分値を第一原理密度汎関数法による計算結果との比較検討により遺伝的アルゴリズム(GA)を援用してパラメータ化する手法を確立した。その結果京束縛近似パラメータを簡便に生成し,あらゆる分子ナノ構造の電子状態の解析に使うことができるバンド構造シミュレーションツールを作成した。 2.分子デバイス内の電子状態解析 上記の手法に基づき簡単なフェニルジチオフェン(PDT)系の分子構造における電子状態と電極の結合を考慮し、従来Si(シリコン)MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果型トランジスタ)において素子長が50nm以下の場合に得られているトランジスタ特性と同様な特性をnmオーダの分子デバイスでも実現しうることを明らかにしている。今後は、有機トランジスタとして取り扱われている有機系への応用や、キャリアの散乱効果を含んだ形でのシミュレーションとデバイス微細化に伴う状態の離散化やトンネル現象等の量子現象の軽減法の探索とその効果を積極的に利用できるデバイス構造の探索を行う。
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