研究概要 |
最終目標は、LSIの処理速度を制限している長距離金属配線を光配線に置き換え、高速な光配線LSIを実現することであるが、本研究では、電気光学材料を用いた小型の光スイッチをシリコン基板上に低温でモノリシック集積する技術を開発する。 平成17年度は、スピン塗布(Ba, Sr)TiO_3(BST)電気光学材料を用いてSi基板上に550℃でマッハツェンダー光スイッチをモノリシック集積し、その動作実証に初めて成功し、光変調率2%を得た(Appl. Phys. Lett.88,161107(2006))。マッハツェンダー型を用いた理由は、リング共振器型に比べ製作プロセスが容易なためである。 18年度は、スパッタ法によって基板温度を450℃に低減、SiLSIの最上層に金属配線に損傷を与えない低温で形成することに初めて成功した。光変調率を10%まで高めた(Jpn. J. Appl. Phys.46, No.4B, p.2462(2007))。 19年度は、BST膜の組成調整と結晶性を高める研究を行ったが、上記以上の性能には至っていない。BSTに代わり、歪み印加によって電気光学効果が発現するSi結晶を用いてリング共振器光スイッチを製作し、動作電圧200Vで光変調率33%を得た(電子情報通信学会技術研究報告、OPE2007-143, p.41(2007))。従来のSi光スイッチは、サイズの大きい電界駆動マッハツェンダー型か、小型なリング型では電力消費の大きな電流注入型であった。我々は、サイズと消費電力の両方の要求を満たす電界駆動リング共振器光スイッチを初めて実現した。測定結果を解析した結果、歪みが不十分なため、電気光学効果ではなくSi表面に誘起されたキャリア濃度変化に基づく屈折率変化によって光変調されていることが分かった。今後、歪み増大とデバイス構造の改良により、光変調率の向上と駆動電圧の低減が期待される。
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