研究概要 |
熱減磁による再生信号レヘルが低下するサーマルディケイが、垂直磁気記録を用いるハードディスク装置における基本的な信号処理方式であるPRML (Partial response Maximum Likelihood)方式の性能にとのような影響を与えるのかはまだ知られていない。そこで、本研究では、まずサーマルディケイのモテル化を行い、これを用いてサーマルディケイがPRML方式の誤り率特性に与える影響について検討する。サーマルティケイにより記録系列における"0"または"1"のラン長が大となるとその再生波形は磁化反転間の中央に近づくほど振幅減衰が大となる傾向がある。シミュレーションでは、これを階段特性に白色ガウス系列を付加したものと記録系列のインパルス応答との畳み込みを求め、サーマルディケイの影響を受けない再生波形から減ずることによりモデル化を行った。その際、畳込みにより得られる波形の実効値をラン長に応じて調整することにより、実測値とシミュレーション値の振幅減衰量を合わせた。また、線記録密度を1000kBPI、再生ヘッドのトラック幅を140nm、平均クラスタサイズが8.6nmの場合のマイクロトラックモテルにより再生波形を求め、これを用いてPRiML方式のビット誤り率特性をシミュレーションにより求めた。1000秒経過時の最大減衰率が0.73の熱安定性の悪い媒体を用いたときの誤り率特性は、全雑音電力に対するジッタ性媒体雑音電力の占める割合が80%のとき、最大ラン長が16の128/130(0,16/8)符号の場合、SN比が25.5dBより大となると飽和傾向を示し、この符号より符号化率が悪いが最大ラン長が6と短い16/17(0,6/6)符号の場合に比べて誤り率が劣ることが明らかとなった。また、このようなSN比領域において生じる誤りは1ビット誤りのみであり、ポストプロセッシングによる誤り訂正により性能改善が期待できることが明らかとなった。現在、この検討と併せて、適応型PRML方式の検討を行っている。
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