研究概要 |
本年度は,まず,画像データ収集のための環境の整備を行った.具体的には,死体撮影用のCT撮影装置を千葉大学医学部に設置し,データの外部出力のためのインタフェースの整備を行った.これにより,安定して画像データの収集が行えるようになった.また,頭部と胸部の骨を対象としたモデル化の手法について検討した.死亡後に撮影されたCT画像から死因を調べる場合,骨折は重要な鍵となる.骨折部位と死因とは関連性が高く,骨折を調べることで死因の特定ができることが少なくない.しかし,微細な骨折までを含めて全身の骨を医師が精査することは難しく,計算機による支援が求められている.本研究では,正常な頭部の骨は左右対称性が高いことに注目して,まず,頭部の左右対称面を抽出し,それを利用したモデル化の方法について検討した.具体的には,CT値等に基づいて特徴点を抽出し,それらをランドマークとして二乗誤差の最小化によって左右対称面を抽出した.次に,左右で差分を求めて左右差を強調した画像を作成した.現在は,この画像に対して,固有画像法を用いたモデル化する方法について検討している.次に,胸部に関しては,骨折の診断に解剖学的な情報を用いるために,肋骨や椎骨などを個別の骨に分類する手法について検討した.実際には,まず,各骨のラベルとその存在確率の情報を持つ電子アトラスを作成した.また,未知画像をその電子アトラスに位置合わせをする手法を開発した.さらに,位置合わせ後のアトラス上のラベルの存在確率に基づいて分類を行う手法を開発した.現在は,更に精度を高めるために,骨の分割位置の統計的モデル化を進めている.今後は,以上のモデル化の結果に基づいて,正常と異常の判定を行うアルゴリズムを作成する.
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