平成20年度の期間内課題を「植物蛍光データに植物生育診断アルゴリズムを組み込んだ植物生育診断技術に確立に向けた総合研究」とした。以下の3点を重点的検討項目とした。 1蛍光ライダーによる自然植生からの蛍光スペクトルの遠隔検出実験 前年度までに完成をみた蛍光ライダーシステムを用いて、10-50m離れた場所に自生するケヤキ、サクラ等の樹生葉からの蛍光スペクトルの、非破壊・遠隔的・実時間計測に成功した。450nm、685nm、740nmを中心とするスペクトルを得た。 2HPLCによる植物蛍光起源物質の同定・定量実験 蛍光スペクトル計測後に生葉を採取しHPLCによりクロロフィルの分析を行った(分析会社依頼)。当初カロテノイド、キサントフィルについても分析を計画していたが、大量のサンプルが必要なこと、標準分析の範囲を超えることから断念した。クロロフィル濃度と蛍光スペクトル(685nm、740nm)強度に良い相関が見られた。 3植物生育診断アルゴリズムの適応、病害発生予測、総括 蛍光スペクトル450nmは光合成二次代謝物質および老化・枯死関連情報を、685nmと740nmはクロロフィル形成・破壊過程関連情報を担うことがわかった。病害発生時には、蛍光スペクトルが変化するため、標準(健康)スペクトルの形状との比較により判断可能である。種類毎に各値(相対値)の月変化・季節変化を追跡することで、植物を採取することなしに遠隔的に実時間で植物の健康診断が可能なことを示した。
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