研究概要 |
化学プロセスや石油精製プロセスに代表されるプロセス産業界においては,国際競争の激化の煽りを受けて,生産性の向上,省エネルギー・省力化など,品質向上と生産コストの低減が一層進められている。その一方で,プロセス全体の安全性(安定性)の維持や,コントローラパラメータのチューニングが十分でない箇所を特定することを目的として,制御性能を操業データから評価する研究が,近年盛んに行われている。(1)制御性能を評価し,(2)制御性能が十分に発揮されていなければ,所望の制御性が得られるように制御パラメータを調整するといった一連のプロセスが,突際の現場において必要とされている。このような「評価」と「設計」を統合したアプローチは,現在,産業界における大きなニーズとなっている。そこで本研究では,この問題に着目し,プロセス監視と制御のコンカレント構造を有する制御システムを開発した。具体的には, (1)モデリング性能評価に基づいて,モデルの性能が劣化したときにのみパラメータ同定を行い,この結果に基づいてPIDパラメータを調整する制御方法(パフォーマンス・アダプティブPID制御法)。このとき,PIDパラメータ調整に際しては,定常状態における制御性能(制御誤差の分散と制御入力の分散)を考慮して調整する。 (2)一般化最小分散制御規範に基づいた制御性能評価法を確立し,この評価値が予め定めた基準値を下回った際にのみ,PIDパラメータが勾配法の考え方に基づいて調整される方法(パフォーマンス駆動型PID制御法)。 (3)非線形システムに対して,データ駆動型モデリング手法と上述の(1)の方法とを融合した制御法(データ駆動型パフォーマンス・アダプティブPID制御法)。 を開発し,数値例,実システムへの適用を通して,これらの手法の有効性を検証した。
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