研究概要 |
鉄筋コンクリート構造の劣化現象を [1]モルタルと骨材からなる複合材料とみなした材料的な劣化 [2]コンクリートと埋め込まれた鉄筋からなる複合構造の構造的な劣化 の2種類に限定して数理モデルと解析手法を構築した。前者には、本来・mオーダーのスケールで細孔構造の温度応力および化学的作用による劣化があり得るし、またこのレベルでの非均質性を考慮して流れの場を解くことでmmオーダーにおける平均的なセメント硬化体の浸透・拡散特性を評価しうると考えられるが、本研究ではこれらを無視してmmオーダーの非均質性のみを考慮した。また、前者[1]と後者[2]には、それぞれ図に対応して以下の評価項目を考慮可能な手法の開発を行った: A.マクロな浸透/熱伝導・物質拡散・変形性能・強度特性とその経時変化の評価【均質化法の適用】 B.鉄筋の腐食・膨張を外的作用としたコンクリートのひび割れ過程【有限被覆法(FCM)による数値解析】 項目Aについては、マクロスケールにおける材料特性をメゾスケールの非均質性に対して均質化法を適用することで,新規のミクロ・マクロ連成モデルを提案した。具体的には、コンクリート材料のメゾ構造の経時的損傷によりマクロな材料特性が変化することを考慮した均質化法の定式化を行い、劣化状況に応じたマクロ物性評価が可能となった。時間の都合上、これらのマルチスケール解析により評価したマクロ特性については実験的検証が叶わなかったが,既報告,あるいは物理的洞察に照らして妥当な評価ができたと考える.また、このように各物理現象に対するマルチスケール連成解析を個別に行うツールを整えるのと平行して、項目Bに関連して、有限被覆法を適用して鉄筋腐食に伴う膨張圧に起因したコンクリートのひび割れ解析も実施し、鉄筋のかぶりに応じたひび割れモード発現のメカニズムについて議論した。
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