研究概要 |
自然状態で存在する砂地盤には細粒分含有率の高いものもあるが,その液状化特性については未解明な点が多い。例えば,標準貫入試験結果に基づいて液状化強度を判定する際に用いる関係式は,細粒分の多い砂質土の場合には極めて限定されたデータに基づいて設定されており,必ずしもその妥当性は明らかになっていない。実務で最も信頼性の高いサンプリング手法として用いられている凍結サンプリングも,細粒分の多い砂質土の場合は透水性が低いため,凍結速度が大きすぎる場合には,間隙水の膨張によって試料が乱されてしまうおそれがある。このような乱れの程度の評価法についても確立された技術は存在しない。人工的な埋立て地盤では,近年の地震で細粒分の多い砂質土が液状化した例が数多く報告されている。一方で,自然砂地盤の場合には,細粒分の多い砂質土が液状化した例は限定的である。この違いの理由として,年代効果や強い土粒子構造の発達などが考えられているが,十分な説明はいまだなされていない。これらに対して,再構成試料を用いて液状化試験を行うと,細粒分が多くてもその液状化強度はあまり高くないことが知られている。以上の背景のもとで,本研究では,細粒分の多い自然砂質土の液状化特性に及ぼす諸要因の影響を系統的な実験により明らかにして,その定量的な評価法を提案することを目標とする。本年度は最終年度であり,砂質土の液状化挙動に影響を及ぼす要因について,主に堆積年代の違いと微小変形特性に着目して行った室内試験の結果をとりまとめた。原位置で凍結させて採取した年代効果を有する試料と,これと同じ材料を用いて室内で再構成した年代効果のない試料を対象として,動的および静的な測定方法で微小変形特性を計測しながら液状化試験を行ない,さらに一部の試験では数十パーセントを超える大ひずみ領域まで試験を実施した点に特徴がある。
|