研究概要 |
本研究は,安価で取り扱いが簡便,さらに広範囲を網羅しながらも,リアルタイムに高精度で斜面の動きをモニタリングする技術を開発することを目的に,前年度までに次の項目の開発を完了させた. ・人の近づけない危険な斜面でも,数km遠方から写真撮影を行うだけで,数mm以下の分解能で広域の変位が検出できるデジタル画像計測技術を完成させることを目的に,100mの撮影距離で1mの計測精度を得る基礎理論の構築を行った.これは,航空写真測量の原理を基に,対象物を数10枚の写真に撮影することにより高精度で計測を行うものであり,デジタルカメラの利点を活かして,撮影から解析までを自動処理化するものである.本年度はGPS/IMU搭載機からのデジタルカメラによる写真撮影による計測実験も試行し,当理論の妥当性を検証した. ・小型の電波発信機を製作し,それを対象物に設置し,同じく小型の複数の受信機で当該発信機からの電波を受信することにより,各受信機が受信した電波の位相差を解析することで対象物の動きをリアルタイムで検知するシステムを試作し,実際の斜面において当該システムの有用性を検証した.その結果,理論精度である0.5mmの変位を検出することが確認できた. このように開発した各モニタリングシステムが実際の現場にて適用可能であることが検証できたので,平成18年度は,さらにリアルタイムでの計測データをGIS上で統合監視するシステムの構築を図った.このGISはデジタル画像,電波位相差のデータおよび変位の解析結果を,地形情報あるいは地図情報と組み合わせて測地座標系で議論できるものであり,次年度はテレビ放送波によって当GISデータを広域に配信する防災ネットワークの構築をめざす.
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