研究概要 |
河口や潮汐入り江は, 船舶の航行や洪水の通り道としての役割があり, その水路の維持管理が必要である. しかし, これらの水路は沿岸漂砂が堆積しやすいため狭隘化しやすく, しかも現象には波, 河川流, 潮汐流と3つの外力が関与するため複雑で, 未解明な部分も多く, 管理が難しい問題のひとつである. 本研究は, この3つの外力の作用下で生じる, 河口開口部や, 潮汐入り江の地形平衡条件を高度化し, 水路管理に資することを目的としている. 砂州の中を浸透する流れを現地観測し, その流量を定量化した. 次に, この浸透の影響を考慮した地形平衡条件を解析的に導き, 実用化に一歩前進させた. 河口砂州の制御には, 従来導流堤や離岸堤など沿岸漂砂を抑制する海岸構造物が多く使われてきている. しかし, これらの効果は未解明な部分が多く, 抑制しすぎると周辺の海域に悪影響をおよぼす副作用が報告されてきている. 本研究では, 海岸構造物周辺の掃流砂・浮遊砂の挙動を精度良く予測する数値モデルを開発し, 構造物による沿岸漂砂の抑制効果を格段に良く評価できるようにした. これにより, 河口部に流入する土砂量の評価が可能になった. これと地形平衡条件を併用すると, 所期の水路幅に維持するために必要な, 海岸構造物の規模や配置が計算でき, 最適な海岸構造物の設計を可能にするものである. さらに, 高波浪時に顕著になるウェーブセットアップを評価し, これに伴う水路流入量を定量化した. これも, 地形平衡に影響を与える重要な外力の定量化である.
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